’25.1.9
デモクラシーの衰退が言われて久しいが、今回もその話。日経のコメンテイター小竹氏の記事。

眼前の世界に広がるのは、全体主義に勝利したはずの民主主義の悩める姿だ。スウェーデンの研究所の調査によると、23年時点で民主主義陣営は91か国・地域、権威主義陣営は88か国・地域だが世界の人口に占める割合では前者が29%、後者が71%と大差がつく。

先進国でも勢いづくのは過激な排斥主義や無責任なバラマキだ。
健全なデモクラシー(民主主義)ではなく、エモーション(感情)がリーズン(理性)に勝る「エモクラシ―」英歴史家のニューアル・ファーガソン氏は、一期目のトランプ政権下で混迷を深めた米国をこう評した。
感情に流されがちな世界の政治を、どう捉えればいいのか。中長期的な潮流を識者に尋ねた。

・佐藤卓也(上智大教授)
快・不快(快感と不快感)で反応する「情動社会」と、民意の受け売りで即決する「ファースト(高速)政治」の流れが鮮明になった。日本は米英ほどではないが、輿論(公的意見)を尊重するデモクラシーより、世論(大衆感情)に迎合するポピュリズムが世界的に勝ちつつある。

・宇野重規(東京大学教授)
政治の無力化や貴族団体の弱体化などが進み、人々を団結させる要素が変化してきた。組織・団体への忠誠や自己の利益ではなく、好きか嫌いかを基準とする「ファンダム」の理論が政治を動かし、その危うさが前面に出ている。

・吉田徹(同志社大学教授)
SNSの普及で指導者と有権者が直接つながり、ナラティブ(物語)の動員力が重みを増す。民意を方向付ける政党やメディアなどのガイド機能も低下し、理性で制御しにくい政治になってきた。

私たちは民主主義陣営の劣化に歯止めをかけられるのだろうか。格差の解消や治安の回復、エリート支配の是正といった抜本的な対応はもちろん、様々な工夫でエモクラシ―の抑制に努めたい。
佐藤氏が唱えるのは善悪や優劣の判断を急がず、曖昧さに耐える「ネガティブリテラシー(耐性思考)」である。
即断しない、うのみにしない、偏らない、中だけを見ない(隠れた情報にも思いをはせる)という「ソ・ウ・カ・ナ」の姿勢でメディアに接するなど、古典的な懐疑主義で民主主義を立て直すしかないと語る。

民主主義は次善の政体であり、未完の政体でもある。指導者だけでなく有権者もメディアも、時代の要請に合わせた更新の知恵を絞り、改良を繰り返すしかない。ポピュリズムが徘徊する25年の重い宿題だ。

と、こんな記事だ。きのうのプライムニュースでジャーナリストの桜井よしこ氏(この人は石破首相を真から嫌いなようだ)、「石破首相は理屈ばかり言って動きが遅い。トランプ次期大統領にすぐにでも会って安倍前首相のように懐に入って好かれるべきだ」と言っていたのを思い出す。
国民は「ソ・ウ・カ・ナ」の精神で政治家の活動をみて判断する必要があるのだろうが、民意を反映させるには無力さを感じるばかりだ。